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「問題点の解決方法など、とにかく足で情報を稼いでいました」


Q 大学のチームではどこのパーツを担当していたのでしょうか?
A ブレーキを担当していましたが、その他クラッチ、スロットルやそのペダル類、ワイヤーやオイルラインの取り回しなどの設計、製作を担当していました。
Q 担当パーツで在学中に渡邊さんが改良した点について教えてください。
A ペダル、レバー類などは、NTNのベアリングを使ってガタを無くした事です。その他、目立ったブレイクスルーは出せませんでしたが、この点についてはデザインレビューで評価されました。
Q パーツを改良する上で苦労した点や課題だった点はどんなところでしたか?
A ドライバーが直接操作するペダル類、クラッチのガタ対策やブレーキのワイヤーやオイルラインの取り回しなど、地味なところが特に難しい課題でした。この辺りの設計がいい加減になると、ダイレクトにドライバビリティに影響するので、特にドライバーから仕様変更や設計変更などのリクエストを受けることが多かったです。
Q そのような問題点をどうやって解決したのでしょうか?
A 解決方法は、チーム内でアイデアを出すだけでなく、町工場に加工を依頼しに行った際に、その工場の方にアドバイスを貰い、ベアリングでガタを詰める方法や、効率的なオイルラインの取り回しについて教えてもらいました。今ほど他大学のチーム間でコミュニケーションが活発ではありませんでしたので、とにかく足で情報を稼いでいたという感じです。
Q 同志社大学の当時のチームや車両の特徴はどんな感じでしたか?
A 部品やスポンサーを関西の企業で固め、オール関西で大会に挑んでいました。また、出来る限りの部品を自作することを目標にしていました。初年度でDiffユニットを自作したのは私たちの大学だけだったと思います。

★パッとアイデアが湧く柔軟な考え方は、学生フォーミュラの経験が活かされているのかな、と感じます

Q 就職においてNTNを選ばれた理由を教えてください。
A 就職活動のときに、当時の人事担当者が学生フォーミュラについて良くご存知で、私たちのスポンサー窓口も兼務されている方だったので、是非NTNで働いて欲しいと熱く説得されました。また、地味でありながら、自動車には必要な部分であった部位の設計を担当していたというポジションと、ドライブシャフトやベアリングが自動車の中で扱われる位置づけが非常に似ており、派手ではないけど地味に自動車作りに携わりたいと考えたということもあります。
Q 現在はどのパーツを担当しているのでしょうか?
A 等速ジョイントの設計業務を担当しています。等速ジョイントの中でも、特にプロペラシャフトの設計を主担当としています。カーメーカーより提案されたスペックに基づいて、サイズ選定や取り付け形状の設計、またその後は軽量化や原価低減案を盛り込みます。その後は、社内の実験セクションと調整し、試験機を用いてスペックに合致するジョイントが完成しているか、検証をします。
また、プロペラシャフトとドライブシャフトは等速ジョイントを使うという点で共通ですが、入力トルクや回転速度が、ドライブシャフトとは全く異なるので、日々試行錯誤しながら業務を進めています。
量産図面が出来上がるまでは沢山の検討が必要なので多忙な日々をすごしています。
Q 仕事をしていて、「学生フォーミュラの経験が活かされている」と感じるのはどんなところでしょうか?
A トラブルが発生したときの解決アイデアや、特許検討時にパッとアイデアが湧く様な柔軟な考え方は、学生フォーミュラの経験が生かされているのかな。と感じます。
その他では、当時のデザインレビューや車検担当の方の設計に対する指摘や突っ込みが鋭く割と怖い方が多かったので、現在お客さんに技術的な面で突っ込まれた時の対応で狼狽することはほぼありません。
技術面に関しては、先輩社員の知識に圧倒される日々です。
Q いま、もう一度学生フォーミュラをやるとしたら、どんな車両をつくりたいと思いますか?
A 誰が見ても格好良く速い車両というのは、近年の出場校に多く見られます。例えば、今年などは、軽量コンパクトで扱いやすく、乗っていて楽しいなど、殆どのチームがそういうコンセプトで製作されていたと思います。ただ、それだけに没個性になりがちです。私たちが参加していた初年度などは、小柄な女性でも楽しめるよう、ペダルをモジュール化して位置を調整できるようにしていたチームや、フレームを前後に分割して、ワゴン車に乗せることが出来ることを売りにしたチームも有りました。
今もう一度、自分の好きなように車を作れるのであれば、そういうエッジの立った設計の車を造りたいです。あの大学は、面白い車を作っていた。と言われたいですね。
例えば、タンデムが出来る車輌とか、ティレルP34(6輪フォーミュラ)を学生フォーミュラのスケールで作るとか。レギュレーションに合致するかは分かりませんが。
Q 学生フォーミュラの活動を通じて、学生に学んでほしいことは何でしょうか?
A 図面で語れるエンジニアになれるように日々技術を磨いて欲しいです。技術者の共通言語は図面だと思います。今は、時間がないのでポンチ絵などで部品を作る事も多いと思いますが、活動を通じて規格に準じたきっちりとした図面からものづくりをする事の重要性を学んで欲しいと思います。
あとは、学生フォーミュラは普段の授業で得た知識を実践できる場だと思います。与えられた部品の寸法から逆算してモノづくりをするのはある意味簡単ですが、今まで学んできた知識を使って、寸法を決め、部品を選定するという力も身につけて欲しいと思います。
Q 「ものづくり」について、プロとなった立場から学生へアドバイスをお願いします。
A プロの仕事は、スペック、重量、形状、納期、あと一番重要なコストという数多くの制約を前提に仕事を進めます。皆さんが学生フォーミュラで味わう苦労や壁とはまた異なるものです。学生の間は、レギュレーションと、予算という制約があるものの、それ以外の設計、トラブルや課題について自由に取り組める素晴らしい環境だと思います。
型に嵌らない設計やアイデアで、学生時代にしか出来ない事をやり尽して欲しいと思います。